「…ねぇ。器用に見えて不器用な椎名さんのこと知りたいんだ。いろいろ教えてよ」

「…やっ、先生、困りま…っ!」

「初めて椎名さんのことを見た時からずっと気になってたけど、もっと椎名さんに近付きたくなった」

「…ん…っ」


重なる唇。

啄むように触れた後、先生は私の顔を覗き込んで言う。


「…あ、でも、僕のこと針で刺すのはやめてくださいね?」


先生はいつものような敬語と穏やかな表情でそう言ってペロッと舌を出す。

そのままその舌で私の唇を舐め、深く口付ける。

その口づけは穏やかさとは程遠いものだった。


…そして私はそれを受け入れてしまった。









――この男には不器用なところはあるのだろうか?

暴いてみたい。

そう、朦朧とする意識の中で思った。



Fin.