「こんにちは」


時間になって先生が教室に入ってきた。

でも…生徒は私一人。

いつも定員いっぱいいるのに、こんなことは初めてだ。


「こんにちは。…あの、先生…今日は他の方は…」

「あぁ、今日は椎名さんだけなんですよ」

「え、そうなんですか?先生のレッスンは人気あるから、いつもいっぱいなのに…」

「こういう日もあるんですよ。さぁ、始めましょうか」


にっこりと笑うその笑顔はいかにもいい人で穏やかなもの。

先生とならマンツーマンでも緊張はしないだろう。

むしろいろいろ洋裁のこと質問できるし、ラッキーかも。


完全に私は安心しきっていた。