――普段通り、夕食の買い物をして家に帰る。


「ただいま帰りました」

「小夜。おかえり」


父が何やら資料を出しながら、私の方を振り向いた。


「先程、西洋の方を見掛けましたけど…やはりうちに来られましたか?」

「西洋人?いや。…あぁ、それはきっと今写真を撮りに来ている客人だろう。日本人だが珍しいことに洋装をしているから、小夜もそれを見たんだろう」

「日本人が洋装…それは珍しいですね…。すぐに茶を用意しますね」

「…くれぐれも失礼のないように」

「はい」


――

「失礼致します」


父が『失礼のないように』と釘を刺すくらいだから、身分の高い方なのかもしれない。

私は驚かせないようにと、私は小さな声で挨拶をする。

机の上に熱い茶の入った湯飲みを置いた。

洋装をした客人がどんな人なのか少し興味を持ち、写真機の前に座る人物をこっそりと覗いてみた。


「!」


…生まれてこの方、見たことのないくらいの美男子がそこにいた。

キリリと上がった眉や引き締まった唇は凛々しく、漆黒の瞳に長い睫毛を持つ、女の目を引く容姿だ。

どこかの役者だろうか?

あの容姿であれば、さぞ美しい写真が出来上がることだろう。

少しの間見とれていると、父が部屋に入ってきた。


「何をしている?小夜」

「っあ、いえ。何でもありません。茶はそこに置いていますから」

「あぁ。今からもう1枚撮る準備があるから、その間にお前が客人に茶を持っていってくれ」

「わかりました」