「初めて撮られた日からずっと感じてたけど、俺河原さんに撮られるたびに――」


私の耳をかすめる吐息。


――欲情してるんだ。


蒼は、そう、私の耳元で甘く囁いた。

つい、びくりと反応してしまった私を見て、蒼はくすりと笑った。

でも、すぐにその顔から笑顔が消える。


「ずっとファインダー越しなんかじゃなくて、その瞳に直接俺だけを写したいって思ってた。アイドルじゃない、本当の俺を。……こうやってね」

「――」


…そのギャップは反則なんじゃないの?

……囚われないわけがない。

こんなに熱い瞳に。

もう、吸い込まれそうだ。


「…知りたくない?本当の俺のこと。だから、ね?…俺と秘密の恋、してみよ?」


そう言ってにこっとアイドルの笑顔を浮かべたかと思ったら。


「……ん……っ!」


蒼は噛みつくように、再び私の唇を塞いだ。






「――はぁ……っ…」


唇がようやく離れた時、かわいいアイドルを演じる男の本当の顔が、私の瞳に写し出される。

そして、男の瞳には私が写し出される。


お互いの瞳に吸い込まれそうな感覚に陥りながら、私と蒼はお互いの姿を脳内のフィルムに焼き付けるように、見つめ合い続けていた――。



Fin.