……。

――あぁ…そうか。

これが芸能人によくあるっていう、表と裏の顔ってやつか…。


私は妙に納得してしまった。

でも、まさか自分が遭遇するなんて思いもしなかったけど。

固まってしまった私の顔を覗き込んで、蒼が唇の端を上げて笑う。


「…ねぇ、河原さんって彼氏いるの?」

「………います!だから、離して!」


そうだ!

大人しく捕まってる場合じゃない!

私には彼氏がいるし、そもそもこの一番のお気に入りのカメラを一緒に選んでくれたのは、カメラマン仲間の彼氏だ。

彼氏を裏切る気なんて更々ない。


ていうか、これ、セクハラってやつなんじゃないの?

アイドルだからって、何をしても許されるわけじゃない…!


「…そっかー。じゃあ、俺ら、秘密の恋になっちゃうね?」

「…は?」

「河原さんは彼氏さんに秘密にしなきゃいけないし、俺はファンの子たちに秘密にしなきゃいけないでしょ?」

「な、何を言って…」

「ん?俺、河原さんのこと欲しくなっちゃったからさ」


にっこりとアイドルスマイル。

いや、意味わかりませんけど!