店の入っているビルの屋上に出る。

そこには誰もいない。

目の前に広がったキレイな夜景を見ながら、私たちは話をする。


「…お互い、結婚が決まって良かったな」

「ね!こんな風になるなんて、入社した時は想像もしなかった」

「ほんと」


ふっと柔らかく笑う堀内くんの表情に、私の心臓はドキドキと鼓動が速まり、顔も火照る。

身体を冷やすために来たのに、もっと熱くなるなんて。

…あの頃を思い出すな…。

堀内くんのことがすごく好きだった頃のことを。


「…今だからカミングアウトするけどさ」

「え?」

「俺、好きだったんだよね。…おまえのこと」

「!!!」

「まぁ、俺なんか相手にしてもらえねぇだろうな、って諦めたけど。大阪勤務にもなったし」

「―――…い、今の話、ほんと…?」

「え?…あぁ」

「――っ!」


私は震える両手で口を押さえる。

酔いなんて、一気に冷めてしまった。