――同期と二人きりになったエレベーター。

このまま話さないままだろうな、って思ったのに。


「…あんたってさ、背中、綺麗だよね」

「え?」

「しゃんとしてて。ずっと思ってたんだ。背中にキスしたいって。…まっすぐな背中を反らせたいって」

「!」

「距離があればあるほど、背中が見れるから。距離を取り続けてきたけど…」


距離があったのって、嫌われてるんじゃなくて…

そんな理由だったの…?


背中が綺麗なんて言われたのは初めてで、しかも普段意識してない場所を見られてたなんて、何か恥ずかしくなった。

で、背中を反らせたい?

…って…何…


「…っ」


ツーッと、私の背中を這う、指。

…ゾクッとした。

身体の奥がじんじんと痺れ始める。

逃げるように、背中を反らせてしまう。


「な、何す…」

「この距離が欲しくなった。…あの上司との仲は秘密にしておいてやるからさ」

「…!」


彼との関係、バレてる…!?

私の心を読むように、目の前の男が笑った。


「その代わり。おまえの背中を俺のものにさせろよ。…大丈夫。秘密がたった1つ、増えるだけだから―――」