『…キス、していいか?』

『!!』


そんな風に聞かれたことなんてなかったから、驚いてしまった。

しかも、突然な展開すぎない!?

眼鏡の奥の熱い瞳が私を捕らえる。

後頭部をしっかり支えられていて、目を反らすことはできない。


『なぁ?』

『――…』


直感的に、マルスに触れたいと思った。

…うん、って頷いてしまいたかった。

でも、受け入れるってことは、彼氏を裏切ることになる――?

彼氏がいるのに、違う男(ひと)とキスをするなんて、裏切り行為でしかない。

それがたとえ、現実の人物ではないとしても――。


『…お前のことが早く欲しいんだ』

『――っ』


するりと私の身体をマルスの手が滑る。

ゾクッとした感覚に襲われる。


『ルリの全てを俺に捧げてくれないか?』


甘過ぎる言葉。

甘過ぎる瞳。

甘過ぎる手付き。

甘過ぎる声。


マルスの全てが私を惑わす。