私は動きを止めてしまう。


…初めて見せる彼氏の鋭い目線。

…初めて見せる彼氏の怒った表情。


「…っ!」


彼氏がこっちに向かって走り出した。

あっと言う間に距離は近付く。


「お、作戦成功かもな。良かったな」

「そうだといいけど…」


心臓がめちゃくちゃドキドキしてる。

彼氏を騙した罪悪感と、彼氏が妬いてくれてるのかもしれないという嬉しさと…

愛想を尽かされるかもしれないという不安と。


「おいっ、何やってんだよ」

「…何だと思う?」


少し上がってしまった息を調える彼氏に、煽るように男友達がニヤリと笑う。

彼氏は男友達を睨み、口を開いた。


「……離れろよ」

「!」

「…俺の女に、手ぇ出すな。こいつは誰にも渡す気ない」

「っ!」


その言葉が嬉しくて、涙が出る。

嘘、嬉しい…!


「…そ。じゃあ、後は二人でお好きなように」


絡み合っていた手がするっと離れ、「良かったな」と私にだけ聞こえるように呟き、男友達は去っていく。


その場に残されたのは、私と彼氏だけ。