『無明の果て』

園の歌を聞きに行く前に、あのショットバーで見る半年ぶりの一行を、私は初めて彼を迎えた、新人研修のあの時の気持ちに似ていると感じていた。



運命は切り開いて行くものと信じていたその日、一行に出会い、それは始めから決まっていたのかもしれないと震え、私の憧れが一行になった。


懐かしい、市川麗子の心のようだった。


でも、明るく振る舞っていても、鈴木麗子になった私は、あの時の私とは違う。



「一行、ありがと。

電話くれてとっても嬉しかったわ。

ごめんね、ひとりにさせて。」



「我慢しようと思ったんだ。

だけど、ちゃんと話して、ちゃんと見送って、ちゃんと決心して、そう思っていたのに何にも出来なくて、半年の間に色々あり過ぎて…

どうしていいか、解らなくなったんだ。」



「うん。
解ってるよ。

ちゃんと解ってる。

涼君のことだって、私は行きっぱなしだったしね…


あきれてる?

一行私ね、本当は会社をやるって怖い事だと思ってるの。


失敗したくないって思ってるから。


知らない事を認めるためには、孤独になったりするかもしれないでしょ。


責任はみんな私にあることだし。


遠くにいても一行は私の事を守ってくれるけど、私が一行を守ってあげられない孤独がとっても怖い。


行動するためには、勉強することは大事だけど、私ね、アメリカに行ってわかった事があるの。


大事な事よ。


まだ半年だけど、気づく事の大切さに、やっと気づいたのよ。」


「なに?

どういうこと?」


「”気づく“って事。
生きて行く事に理由付けなんかいらないのかもしれないけど、評価されるのはずっと先なんだって気づいたの。」



岩沢が私の前で見せた後悔は、自分だけを特別に見て来た事が、ひとりになった今を作ってしまったんだと、私には思えた。



無駄な人生などないけれど、無駄足を踏んでも、評価されないままでも、いつか必ず努力は役に立つと、気づいたのだ。



岩沢に出会った必然がそこにあるような気がしたのだ。