『無明の果て』

彼もまた、関わらなくてはならない運命の元にいるのかと、生きて行く不思議を思案している私もいる。



機内は空席も少しあり、私はすぐに新聞を受け取り、隅からゆっくりと眺めていった。



「あっ」


見逃してしまいそうな小さな記事に、息が止まりそうになった。


【アマチュア囲碁本因坊 優勝者


西山 涼 23歳】


誇らしげな涼の写真は、やっぱり美しく輝いていた。



一行、おめでとうっていつか二人で言える日がきっと来るよ。


涼は必ず、笑いながら

”ありがとう“

って応えてくれる。







そして私は半年ぶりに、ここへ帰ってきた。


通い慣れたはずの会社への道も、たった半年の時間が、その景色を懐かしいものに変え、見慣れていたはずの何もかもが、はじめて見るもののように、今の私の目には映った。



一行の仕事が終わるまで、あのショットバーで待っているからと、一行にはメールを入れた。



「こんばんは」


「いらっしゃいませ。
お久しぶりですね。」



「半年ぶりに美味しいお酒が飲めそうだわ。」



「何になさいますか?」



「そうね、やっぱり、いつものダイキリをいただくわ。」



「かしこまりました。
あっ、外でお会いになりませんでしたか?

いつか一緒においでになった方が、つい先ほどまでいらっしゃいましたよ。」



「えっ、あの綺麗な顔をした…」



「そうです。
一杯だけですぐお帰りになりましたけど。」



涼がいたというこの店で、想う。



帰ったその日に擦れ違い、運命は出会う事を許さなかった。



あなたはあなた。


私はわたし。





一行、夢は 闘うものじゃない。