『無明の果て』

果てしなく続くように見えるこのネオンの大地も、自分の足で進んで行くからこそ、たどり着くべき場所があるんだという事を、この胸に深く刻んで。



涼から渡された手紙の事は、今は触れないでおこうと、そう決めた。



”市川麗子“宛に書かれたそれは、一途な想いが溢れ過ぎて、まるで誰か知らない人の事を想っているように、私の心に映った。



ただ涼が、まだ若い美しい青年が、自分の力で立ち上がる術を見い出す日が簡単に訪れるとは、思えない言葉が、頭の中をめぐっている。



「一行から毎日電話が鳴り、メールが入りましたが、僕は出ないと決めていました。


なぜか、良い知らせとは思えなかったからです。


麗子さんがアメリカへ行って頑張っている事を、僕はいつも考えて暮らして行くでしょう。

でも多分、一行にはもう会うことはないと思います。」




そして涼は、私達の前からいなくなった。