『無明の果て』

麗ちゃん、俺は大丈夫だよ。

これからの麗ちゃんの仕事に、俺の存在がマイナスで関わる事は嫌なんだ。



麗ちゃんの生き様を見届けるのに、俺に出来る事は、送り出す事だと思うよ。」



一行が転勤になって、それでも私のすぐそこの未来をも認め、私は一行にまた力を授けられるのだ。



「カッコ悪いのは、駄目よね。」



流されてしまいそうなのは、私だった。

押し潰されそうなのは、この私の方だった。



そうして私は、アメリカへ向かう決心をした。


一月の間に、仕事の整理、身の回りの事、そして気持ちの置き所を明確にするのは、あまりに過酷な作業である。



ただひとつ、なんとなくだけれど、一行と離れるということの意味が、重く 厳しい日々を運んでくるだろうと云うことだけは分かる。



そしていつか、それぞれの道を歩む日が来るかもしれないと、そうも感じていた。


アメリカ行きを決めた時、それは別れさえも覚悟をさせた、それほどの事であると、一行には言わないで行くつもりである。