『無明の果て』

誰でもいいわけじゃない。


だけど、涼だから、私の手はそれを受け入れたのだ。



あのバーで、囁かず、もたれず、ただ ただ静かにグラスを空けただけだ。



私の醜いズルさに、いつか神様は罰を与えるのかもしれない。


それでも昨夜だけ、そう、あの時だけ。



一行への嘘がまた一つ増えてしまった。





会社では、人事移動の発表がされ、一行にもすでに辞令が下りただろう。


コンパ仲間の後輩は、


「先輩、知ってたんですか?」


と、走り寄って来た。


「うん。
どうしようね。」



何があっても、会社でだけはキャリアウーマンを演じなくちゃならない。



一行がどんな話をしても、覚悟のいる夜になりそうである。



朝、涼からメールが入っていたけれど、まだ開けていないままだ。



さよなら 涼。

ごめん 涼。



このまま捨てるよ。