『無明の果て』



部下の若い女子は

「素敵な人来るかなぁ」と早々に着替えに向かい、

「先に行ってま~す」と手を振った。


やっぱりカワイイなぁ。

お店に入る時は手を振った方がいいのか?

いや 辞めておこう。
何をやっているんだ。
私はかなり、テンパっている。


メモを見ながらその店に向かいドアを開けると、


「先輩 ここっす!」
と、新人の青年が手招きしている。


もうすでにみんな集まり、その視線が私を迎えた。


これで7人が揃った事になる。


「後で自分の親友が来るっす」
と言うことは、この中に欣也さんがいるという事になる。

往復してみたが、そこにいたのは、北大路欣也ではなく"どこかで見た事のあるような人" だった。


どこかで見た事のあるような人が悪いわけではないが、おかげで緊張は一気にほどけた。


だけど気を使い、話題提供に努力する彼は、とても好感触だった。

ただ私が100歩譲っても我慢ならない事があった。

相手側だって特別私に気がある風でもないから余計なお世話かも知れないが、パンツがくるぶし丈ってのはどうなんだ。


そのセンスがその人のセンスに見えてくる。

さすがに勝負下着までは着けて来なかったが、私だって張りきってお洒落してきている。


いや、そんな事はどうでもいいのだ。

こうして楽しい一時が、私のカラッカラの人生に潤いをもたらしてくれる。


「おっ!遅かったな」

親友だという最後の一人が入って来た方向から、華やかな光が射した気がしたのは私だけだったのだろうか。



「うえっ!」 自分でも聞いたことのないような声が出た。

そこには、あの夢の中で見た美しい青年そっくりの若者が立っていた。


運命だ。

今度こそ運命だ。


「こんばんは」

その声に、私以外の女子三人は、ハートの瞳で駆け寄って行った。


主役登場。


さてこんな時、キャリアウーマンは、どうしたらいいんだ…