『無明の果て』

ボーカルがその時付き合ってた娘なんだ。

その時一緒だった。」


「見たよ。
二人で信号渡って行くとこ。

涼くんに、彼女が誰か教えてもらったけど、怖くて聞けなかったの。

親しそうだったし、綺麗な人だったし、若いし…」



言わないでおこうと決めていたのに、しゃくりあげながら、言葉をぶつけてしまった。



「ごめん麗ちゃん、先に言えばよかったのかな。
そのパーティに麗ちゃんも誘うつもりで、秘密にしてたんだ。」



涙と鼻水でクシャクシャな顔を



「あらら」


と一行は覗き込んだ。


「フラレたのはこっちだし。」



だけど一行が言うには、涼が一行の元カノと連絡をとり、こう言ったというのである。


“一行は年上の上司と付き合っている”と。

あの日以来、元カノから時々メールが届くらしい。



涼から連絡はないけれど、わざわざどうして 元カノに、そんな事を言う必要があったのだろう。



それにしても、そのパーティで、元カノと顔を合わせて、良い事なんかあるわけ?