『無明の果て』

筋書きを書いて、未来を決定出来るとしたら、それは思い通りの幸福を手に入れる事につながる道を、迷いも無く行く、尊い事なんだろうか。



だけどやっぱり、先の解らない毎日の、期待と不安の中で暮らす生き方を誰もが選ぶだろう。


明日を知らないでいることが、夢見ると言うことなんだから。


私の今までは、思い通りにならないことでも、きっとうまく行くと信じて乗り越えようとしてきた日々の、繰り返しだったような気がする。



一行が語ろうとしている事が、私の頑張りではどうしようもない事実なら、その時はいさぎの良い、女っぷりを演じるしかないんだろう。


だけど、そんな事を演じても、一行にはすぐ見破られてしまうだろうけど。



「この間、遅くに帰った日があったでしょ。
あの時のこと。」



「私はあのバーで、ひとりで飲んでたんだよ。」


「知らなかったなぁ。
涼に聞くまで、ここに居たと思ってた。

涼は何度もあの店に行ってたって言ってた。
偶然に会える場所は、あの店しか知らないからって。


涼がそこまでマジだったって、さっき話しててびっくりしたよ。

麗ちゃん、迷ってるんじゃないの?」



「涼くんのこと?」


「俺の知らない事って、もっとあるの?」


元カノの話じゃないの?
と思ったけど


「初めての合コンの日に、メールが来たのね。
それからは、何度か電話やメールが来たりしたかな。

それだけよ。」


「ふぅ~ん。

好きとか、付き合ってとか、そういうやつ?

でもさ、どうして言わなかったの?」


「だって、その時一行は彼氏じゃなかったよ。

正直、私も涼くんに興味あったしね。

好きとか言うんじゃなくて、あんな綺麗な男性、見たことなかったもん。

疑ってるの?」



一行は下を向いたまま、少し考えていたけど、何かふっきれた様子で話はじめた。



「麗ちゃん、学生の時バンドやってたって話したよね。

その時のドラムの奴が今度結婚することになって、レストランでパーティすることになったんだよね。


そこで演奏することになってさ、その打ち合わせだったんだ。