『無明の果て』

「俺はいつも二番目だった気がします。

一行は意識してないけど、勝手にトップ走って、苦しい顔ひとつ見せないでいるんです。
俺には真似が出来ない。

近くにいるだけに、それがよく解るんです。」


「そうだね。
一行はいつも自然体だよね。
肩の力がいい感じに抜けてる。」



涼は私に恋したわけではなく、一行が選んだ私に憧れているんだろうと私は思った。



「涼くんは、私が好き?」


「好きですよ、すごく。」


「どんな所が?」


「どんな所って、うまく言えないけど。」


「言えないって事はそれほどじゃないって事だと思うよ。

一行が私の事を嫌いになっても、涼くんのことは愛せないと思う。

一行にフラレたからって、次は涼くんの番って話じゃないでしょ。」


「待ってようかなぁ。」


「うわっ、ひどい。

フラレると思ってるのね。」


こんな風に笑い合いたかったのよ と心で思いながら、このままひとりに戻ることにした。


「涼くん、今度は一行も一緒にね。
離れていっちゃ嫌だよ。

いい?
わかった?

これは、希望じゃなく、お願いになっちゃうのかな。」


「はい」



「聞こえないなぁ。」


「麗子さん、一行と会う前に俺と出会っていたら、どうなっていたと思いますか?」



「一行と会っていなくても、私は私よ。

“もし”は過去の話でしょ。
過去の心配はしない事にしたの。

一行が元カノと会っていたのは事実だろうけど、一行の事、信頼してるの。

たまたま見ちゃったけどね。

一行と会わなければ、涼くんとも会ってないよ、きっと。」




「麗子さん、明日誕生日でしょ。

初めて会った時、生まれた年は言わなかったけど、月日だけは教えてくれた。」



「年もバレバレ」



「最初で最後のプレゼント」


と、涼は綺麗にラッピングされた箱をくれた。



「フラレっぷりはいいんです。

お誕生日おめでとう」


そう言うと、
涼は走って私の前からいなくなった。