『無明の果て』

涼がいないことで、女の子達は物足りなさげで、やはりつまらなそうである。

連絡も入らないのは、何か急用でも出来たのだろうか。


こんな風に、一人抜けまた一人抜け、フェイドアウトしていくというのは仕方のない事なんだろう。

寂しいけど。


一行と涼の仲が、どんな付き合いになっているのか、私は聞いていない。


もちろん、私から涼に連絡を入れる事はなく、今だって、涼が私の事を好きでいたなんて思ってはいない。


本音を言えば、そう自分に言い聞かせている。


電話やメールのやりとりを考えれば、私にだって思い込みだけでは片付けられない、感じるものがあった。


だけど、何も起きはしなかった。


一行が私を選んだように、私も一行を選んだ、それが全てである。

一行は仕事帰りに私のマンションへ寄り、そのまま泊まる事もあれば、帰る日もあり、面倒だからここに引っ越して、一緒に暮らそうと話している。



それがどういう問題を引き起こしても、今は心配することなど止めておこう。


今日は珍しく、学生時代の仲間達との集まりがあり、ここへは寄れないとメールが入った。


涼も一緒だろうかと考えたけど、聞くのはやめた。


一行が隣にいないのは、ぬるいコーヒーを飲んでるようで、何か気の抜けたようでもあるけど、久々に、バリバリのキャリアウーマンは、一人で飲みに行く事を選ぶのである。



一行と行ったっきり、あのバーのドアは開けていない。


今日はゆっくり色々考えるのもいいかもしれない。


少しお洒落して、化粧も直しドアを開けた。

まだ時間が早いのか、私が一番の客のようだ。


「いらっしゃいませ。
お久しぶりですね。」


馴染みのバーテンさんが微笑んでいる。


「本当に。

バナナダイキリ」



「かしこまりました。」


気のきいた大人は余計な事を言わない。


読みかけの本を眺めながら、ここ何ヶ月かの出来事を振り返っていた。



自分を変えようと心に決めて、それから出会った人々との関わり。