会社では流石に私達のことは隠していたが、せっぱつまった状況ではなくなった事を、会長やみんなに報告すべく、集まりを開く事になった。


会社の若い女の子もメンバーだから、世間にバレるのも時間の問題だろう。


私は平常心を装えるのか、いや、そのままでいいんだ、なんてシュミレーションしてみた。


「麗ちゃん、さっきからブツブツ何言ってるの?」


一行はあれからわたしを”麗ちゃん“と呼んでいる。


「みんなの前でいつも通りでいられるかの練習」


一行は優しく笑って、

「大丈夫だよ。
この間と違ってていいんだから。

その報告するんだから。」


長いこと突っ張ったキャリアウーマンが、心底身に付いてしまった悲しい性である。


「そうだよね。
私、なにやってんだろ。」


「麗ちゃんがこんな人だって、会社の人達は知らないよね」


「こんな人って、どんな人よ?」


「ググゥ~」


「何がおかしいのよ、失敬な!

残業させるぞ。」



「子供っぽいとこなんか、ひとつも見せないでしょ。
俺にはすぐわかったけどね。」



「うっそぉ~」


見せないんじゃなくて、一行にしか解らないことだったんだよ と言いかけたけど、恥ずかしくてやめた。



「あれから涼くんに連絡した?」


「うん、電話した。

けど、麗ちゃんのことは付き合ってるって事以外話さなかったよ。」


「ふぅ~ん。
一行、涼くんが私を好きだって、初めから思ってたの?」



「うん」



「ばっかじゃないの!
一行みたいなモノズキは、そういないって。」


「麗ちゃんには連絡入った?」



「ううん。
私にはもうよこさないよ。

二人で会うことだってないでしょ。

考え過ぎ。

うわぁ~い。
私、ヤキモチ焼かれてる。」



「調子に乗るなよ。」


そのうち雷にでも打たれて、体の中を電流が走り、変な行動にでるなんて事がないように祈るばかりである。



それほどの幸せがやって来た。