『無明の果て』

外に出ようにも、介護という難敵は私を簡単には許してくれず、気づけば十二年…



今になって思えば、出口のない迷路でしゃがみこんでしまいそうな心と、いつも闘っていたような気がします。



孤独とは違う、焦りみたいなものだったかもしれません。



でもその同じ心のどこか隅の方で、負けたくはないと思っている力のようなものが少しだけ残っていた事も、私にはちゃんと分かっていました。




大した事じゃないよと、まだまだ大丈夫だと、必死にその迷路の出口を探す私に、未来の私が静かに語りかけていたのでしょうか。




だけど、ちゃんとそう思えるまで十二年もの年月がかかり、色々なものを諦める事に慣れてしまった私に、私自身が決心させた事。



それは


「行動」


でした。



歩き出さなければ、何も変わりはしない。


何もかも介護のせいにして、誰かのせいにして暮らしていた毎日を、ちょっとカッコ悪いんじゃないのと言われた気がして、被害者のような顔をし、都合の悪い事だけ聞こえないふりをして過ごしていた自分の姿を、やっぱりちょっとカッコ悪い事だと気づいたのかもしれません。




だから、挑戦してみようと思いました。



いつかきっと、と憧れていた小説を書いてみようと決めて、ペンを持ちました。




大それた夢を持ったわけじゃなく、私の心の中だけの挑戦でした。



そうして書いた物語が


『サヨナラの向こうにあるもの』


です。



今改めて読んでみると、短い物語だったんだと分かる事も、その時は何度も何度も書き直しながらの必死の作業でした。




一話書くごとに何人かの友人達へメールで送り、また書いては送り…



優しい友人達は決してけなす事もなく、根気強く付き合ってくれ、有難い事に



「次はいつ?」


と、催促までしてくれました。