一行は直立し、


「市川麗子さん。

なんの取り柄もない俺ですが、あなたの事が好きになりました。


付き合ってください。
よろしくお願いします。」


一行のいとしい右手が目の前にある。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


涙で声にならない。


「先に言おうと思ってたのに、ここぞって時に俺はなんて甘いんだ。」


そう言いながら、抱き締められた。


一行は頭ひとつ大きい体全部で、もう一度
私を抱き締め、


「麗子ちゃん」

と呼んだ。



運命なんて、どこでどう転がるのか 神は罪作りだ。


これから私達に何が起きても、それはその時のこと。


一番大事な人になった一行が、隣にいてくれる事だけで生まれてきた価値がある。