『無明の果て』

妻からの長い手紙には、僕からの質問の答えがしっかりと書かれてあった。



途中まで読んで、絢の写真を手に取り、膝の上にそれを置いた。


そしてもう一度、手紙に目を戻した。




「一行は私から”希望と勇気“ をもらったと私に言ってくれたけど、私も一行からもらった大切なものが、たくさん増えました。



それは、ありのままの自分の心を信じるということ。



悩んだり、迷ったりしながら、そうして決めた心を、素直に信じてみるということ。



明日を信じて生きて行こうと、背筋を伸ばして生きて行こうと、二人で何度も確かめあって、そうしてやっとここまで来たよね。



自分の物差しだけが特別な基準でないことを、一行はちゃんと知っているけど、だけど私は、気付かないうちに少しずつ知ったかぶりをして、一行に会う日まで忘れかけていたそんな気持ちを、もう一度最初からこの胸に言い聞かせるチャンスを、一行に与えてもらったと思っているのよ。


年齢を重ねるという事が、“志”を忘れさせる事と比例するとは思いたくないけど、一行の年代とは違う時代を私が生きて来た事を、一行に伝えて行く事こそが、私の志を貫き通すやり方かも知れないと思っているの。



大袈裟な事じゃなく、気負いのない愛し方で。



一行が決めた私への勇気に、私はとても感謝をしているけれど、その感謝の気持ちを私は一行にしっかり伝えているかしら。



ありがとうって、言葉にしていたかしら。



ごめんね、一行。

ありがとう、一行。



後で…なんて言っているうちに、言葉だけが置き去りにされてはいなかったかしら。



それからね

一行からの手紙に


”夢は何かと聞いてみたい“


って書いてあったのを見て、その答えを探してみたの。


答えは簡単に見つかったわ。


ずっと前からその夢を見続けて、もう三年くらい過ぎてしまったけど…



そしてその夢が叶うのはあと二、三年先になりそうだけど…