真っ暗な夜空の雲を切り裂いて、明日からの新しい自分へ向かって飛び発った飛行機は、一行を乗せて私の視界からあっと云う間に消え去った。
厚いガラスの向こう側に一行の残像を見ながら、ついさっきこの目に焼き付けたその姿をひとり思い出していた。
何度も何度も振り返り、その姿が見えなくなる時一行は、長い右手を高くあげて
「麗ちゃん」
と一度だけ私の名を呼んだ。
そして大きくうなずいて、この上もない優しい顔で私に微笑んだ。
私は泣かなかった。
私も微笑みながらうなずいて、この手を振り続けた。
泣いたりしなくても良いと、大丈夫だからと、何も心配は要らないと、あの微笑みは言っているようだった。
私は眠ってしまった絢を抱いたまま、一行が絢に持たせた私への手紙を、起こさないように絢の小さな手からそっと引き抜き、封を開けた。
私がアメリカへ向かう時に涼がくれた、今はもうどこにもない手紙。
私と同じ名を持つ岩沢の妻が、夫へ宛てて書いた魂を込めた手紙。
そして岩沢が残してくれた、決して忘れる事のない岩沢と私を繋ぐ運命の手紙。
でも、ここにある手紙はそのどれとも違う、一行が初めてくれた私へのラブレターだと、私にはそう思えた。
一行と初めて手を繋いだ時、長い腕で静かに抱き締められた時、出会ったあの頃を思い出しながら、私は便箋を開いた。
いつ書いたのか、びっしりと埋まったメールじゃない一行の文字が、私の方を向いて語りかけて来るようだった。
厚いガラスの向こう側に一行の残像を見ながら、ついさっきこの目に焼き付けたその姿をひとり思い出していた。
何度も何度も振り返り、その姿が見えなくなる時一行は、長い右手を高くあげて
「麗ちゃん」
と一度だけ私の名を呼んだ。
そして大きくうなずいて、この上もない優しい顔で私に微笑んだ。
私は泣かなかった。
私も微笑みながらうなずいて、この手を振り続けた。
泣いたりしなくても良いと、大丈夫だからと、何も心配は要らないと、あの微笑みは言っているようだった。
私は眠ってしまった絢を抱いたまま、一行が絢に持たせた私への手紙を、起こさないように絢の小さな手からそっと引き抜き、封を開けた。
私がアメリカへ向かう時に涼がくれた、今はもうどこにもない手紙。
私と同じ名を持つ岩沢の妻が、夫へ宛てて書いた魂を込めた手紙。
そして岩沢が残してくれた、決して忘れる事のない岩沢と私を繋ぐ運命の手紙。
でも、ここにある手紙はそのどれとも違う、一行が初めてくれた私へのラブレターだと、私にはそう思えた。
一行と初めて手を繋いだ時、長い腕で静かに抱き締められた時、出会ったあの頃を思い出しながら、私は便箋を開いた。
いつ書いたのか、びっしりと埋まったメールじゃない一行の文字が、私の方を向いて語りかけて来るようだった。


