『無明の果て』

ねぇ、絢。


絢が生まれたアメリカへ、一行がいるアメリカへきっと二人で会いに行こうね。



一人ずつの人生だけど、三人でいるからこそのそれぞれの人生を、また今日から始めるんだから。






最終便を待つ空港は、見送りの人々で昼間のように賑やかだった。


会社の仲間に囲まれて少し誇らしげな一行は、ここで私を見送ったその姿とは違う 大きな希望そのものに見える。



「麗子さん。

久しぶりです。」



誰かの声に振り返るとそこには 懐かしい顔があった。



「あ、会長。

わざわざ見送りに来てくれたんですか。


会社にお花まで頂いて。」



「会長ですからね。

どこまでだって行きますよ。

アメリカだってまた行くかもしれません。」


「…ありがとうございます…」



眠そうな目をこすって私に寄りかる絢に



「はじめまして。


麗子さん、一行みたいなこの子の名前は何て言うんですか。」



「絢

鈴木 絢です。」


「絢くん。

よく見ておくんだよ。
お父さん、カッコイイぞ。」



そう言って 静かに一行の姿に目線を戻した。




「麗子さん、涼が明日から対局だって連絡をしてきました。


プロ試験の対局だから、見送りには行けないって。


うまく行くといいなぁ。

麗子さん、今日まで涼が頑張って来れたのは、意地みたいなものもあるのかもしれないけど、僕は思うんですよ。


麗子さんに会っていなくても、涼はプロ騎士を目指していただろうって。


あいつはやる男ですから。」




黙ってうなずいた私に


「大丈夫ですか」


そう言った。







「絢

後でこれをママに渡して。


絢、ママを頼んだよ。

麗ちゃん、絢をよろしく…


麗ちゃん、電話するから…


麗ちゃん、行ってきます…」






わかったから…





一行、わかったから…