「えっ、何処にいたのよ。」


「先輩と行ったバーです。
一人で飲んでました。

涼と二人で来る所に居たくなかったんです。」


私の心を運命と云う力が、今までとは違うどこかへ、形を変えながら静かに静かに、確実にそれを動かそうとしている。


世間の目や、しがらみや、常識や、そして歳の差。


「一行、私の歳知ってる?」


「同級生じゃないことは確か。」


「バカ」


「先輩、今まで涼にヤキモチやいたことなんて無いっすよ。」


一行は急に立ち止まり、手を差し出した。


えっ、何をしたらいいの?


「手」


つなぐの?


私の右手を、一行の両手が背中越しに包んでいる。


暖かい体温は、私の身体に蓄積されて火がついたようだ。


どうしたらいいの、一行。


こういうキャリアは持ち合わせてない。