『無明の果て』

「私も市川に感謝しているんだ。


岩沢から連絡を貰わなければ、私から会いに行く事はなかっただろうし、彼女の事も岩沢の事も心の底では許せなかったかもしれない。


いい歳をしてと笑われるかもしれないが、人の気持ちなんて、そうそう分かるもんじゃないかもしれないなぁ。」




そして 正式に一行の口から特修への決意を聞いたのだ。






暗闇を縫って、機体のライトが点滅を繰り返している。



私が飛んだ時もこんな風にここで見送ったと 一行は言った。




絢…


絢とふたりだから、頑張れるよね。




一行の夢を乗せて機体はどんどん小さくなった。



「後でママに渡して」

と、一行が絢の手に持たせた手紙は 少し ひしゃげて 私の手に渡った。