窓を開けると、風が通りぬける道をすぐに見つけるように、誰でも自分の思う通りの生き方を見つけようと明日を待つ。



自分のやるべき事をやり続けて行く信念を造りだし、育て、熟成させて行くのは簡単な事ではないと、日本へ帰って半年、改めてその膨大な過酷さに、私も、そして一行も真正面から必死で向き合っている。



そう、日本へ戻って半年。



私はやっと 私の会社を持つ事が出来た。



私の知識 経験 そして可能性に、これから先の人生を賭ける時が来たのだ。



一行は週末ごとに大阪からこちらへ戻り、私が思う通りに惜しみ無く手を差しのべ、その準備の手助けに奔走し、そして絢との再会を楽しんでいる。




あの日、新入社員だった一行を今の姿に重ねてみるけれど、でもそれはもう一昔前の出来事のように、懐かしくさえ思えて来るのだ。


でもね、一行、知ってるのよ。



会社の事より、本当の所は、絢の元へ帰って来ると云うのが本音なんだろうと云う事。


絢と一緒に暮らせる日も決して遠くはないはずと、三人抱き合って眠る時、私の夢が現実のものとなり 社会の中で認められる日をまた夢に見るけれど、やっと やっと…



ここまで来た今だからこそ、一行の夢の始まりを迎える時を見い出す番なのかもしれないと、私はひとり考えている。



「麗ちゃん、とうとう明日だね。

オープニングかぁ。」


「夢中だったね。
どうにかここまで来たけど、ちょっと怖い気もするわ。


一行にも、絢にも迷惑ばかりかけて、本当にごめんね。


もうすぐ絢も一歳ね。

あまり一緒にいられなくて、寂しい思いばかりさせて、奥さんもママも失格ね…」




「明日から会社の社長になる人が、何言ってるの。


麗ちゃんに辞表見せられた時、正直こんな日が来るなんて、半信半疑だったんだ。


でも麗ちゃんは、やるって決めたらやるんだって、ずっと見ていて改めて思った。


それはさ、人のせいにしないって事じゃないかと思うんだ。