『無明の果て』

同じ仕事をする仲間と、人生の変化を迎えることなど考えたことはなかったけれど、ふっと、頭をよぎる瞬間がある。


みんなそろそろ出かける準備を始める頃だろうか。

私も待ち合わせの場所へ向かおう。



人混みの中、遠くからでも涼の姿ははっきり解る。

私に向けた微笑みは、ライトアップされたようだ。



「麗子さんここです。」

あらら 駆け出してしまった。
デートでもあるまいし。



「一行に話してきたよ。」


「なんて言ってました?」


「ヤキモチだって。」


「この間のバーの時の俺と同じだ。」


返事に困るような事が続く。


「素敵なものが見つかると良いね。」


傍目には、姉弟といったところか。
美貌が逆ならどんなに幸せかと思いながら、あれこれ探し歩くひとときは、罪な勘違いをさせる。


「有難うございました。
やっぱり俺じゃ選べないや。」


「いつでもご利用ください。」



そして、飲みはじめてから一時間が過ぎても、まだ一行はやって来ない。