『無明の果て』

懐かしい教会の前で、一行は言った。



「麗ちゃん待ってて。
岩沢さん呼んでくるから。

驚くだろうなぁ。」





その間 美しい景色に囲まれた教会を眺めながら、私は絢に話を聞かせた。




「絢、あなたは前にここへ来た事があるのよ。


式の時、パパとママと一緒にここを歩いたのよ。」


と。





しばらくして一行が教会から出て来た。




「一行、岩沢さん、やっぱり留守だった?」



一行の様子が普通ではないことに、手渡された封筒を見てはじめて気付いた。





『鈴木麗子様』





「亡くなったって」





一行の瞳に映る私の顔が、言葉を探している。