そして
「はじめまして。絢」


じっと見つめる一行の目を、大きな瞳が見つめ返している。



「一行、再来月で特修終わる事になった。」


泣きべその絢を抱きながら


「帰れるの?」


一行はそう言って、もう片方の腕で私の肩を抱いた。



「うん。

もう少しだけ頑張ってみるね。」



本当は帰ってからが大変な事を、一行も私もちゃんと気付いているけれど、でも、もう、アメリカへ来て二年の月日が過ぎている。



今はただこの腕に捕まっていても良いんだよね。




どう?


イッパシのキャリアウーマンが、身についている?





「麗ちゃん、ちょっと岩沢さんの所に行ってみない?


出かけていても、絢に教会を見せておこうよ。


僕達はここで結婚したんだよって、写真も撮ろうよ。


岩沢さんが式の時たくさん撮ってくれたみたいに、あの階段で、三人で撮ろうよ。


今度いつ来れるか分からないんだから。」



「そうだね」



岩沢は絢の顔を見たら何て云うだろう。


子供を持たなかったと言っていた岩沢は、孫のようなこの絢の姿を、どんな瞳で見つめるだろう。