アメリカへ来て二年もの月日が過ぎようとしている。



妻になり海を越えた時、思い描いていたそれとは違う 母 と云う役割が私の人生に訪れた事を、これもまた 自らが起こした運命なのかと もうひとりの自分に聞いてみたいと思う時がある。




会社には 少しだけ休暇をもらい、システムの整った環境で 残り少なくなった特修を しっかりやり遂げたいと伝えた時、普通では考えにくい立場での仕事を、ここアメリカは快く受け入れてくれたのだ。




もうすぐ家族で暮らせるからねと、いつも話しかけている愛しい息子の名は



「絢」(けん)




日本でもアメリカでも通用するようにと、一行がつけたその名前を、私はとても気に入っている。




あれきり、挙式の日から教会へは行っていない。


何度か電話やメールで連絡をしたきり、岩沢に会わぬまま この子を抱いて 半年以上が過ぎてしまった。


「もしもし、鈴木ですが、岩沢神父様いらっしゃいますか?」


若い声の男性は



「出かけています。」



と、忙しそうに電話を切った。



そんな事が続き、無理をしてでも教会に行こうとしなかった私が、ここにいる。




そう、無理をしてでも 出向かなくちゃいけなかったのに。














「もしもし、一行。

聞こえてるわ。」