『無明の果て』

あの時と同じメンバーで、今度は合コンというより、美味しいお酒と近況報告の楽しい飲み会といった、そんな集まりになりそうである。


当初の私の目的は果たせそうもないけど、それは次のチャンスを持つことにしよう。


素敵な仲間が、そのまた素敵な誰かを、呼び寄せてくれるかもしれない。


実際、涼という友人が出来たように。


一斉送信後、続々と返信が届き、正幸さんからのメールは腹を抱えて笑った。


「待ってました!
『せっぱつまった会』は私一人になってしまったのかと思ってました。

見捨てられ、このまま死んでゆくのかと、淋しい毎日でした。
必ず出席するんで!よろしく。」



私と同じような心配をしている。


そして涼には、あの日家に帰ってから少し長いメールを送った。


一行といると、とても楽しく過ごせること。

本当は涼くんともお話したかったけど、隣の女性に悪いと思い、声をかけなかったこと。

会えて嬉しかった事。

私が元カノに似ているらしい事は書かなかったけど。


深夜になってから

「一緒ににいたのは、同期入社の娘です。

楽しそうに、何を笑っていたのですか?

麗子さんみたいな上司がいる一行が羨ましいです。

面倒なので、これから電話します。」


うぇ~!
どうしたらいいの。

化粧でも直すか。

あたふたしているうちに、ベルが鳴った。


「麗子さん。
もう寝るとこでした?
メール面倒だから。」

「ふぉい」


「はい」と言おうとしたのに、喉がカラカラだ。


「大丈夫。
私もお話したかったから。」


あれっ、今私は何を口走ったんだ。


「本当ですか?
嬉しいなぁ。
調子に乗っちゃうなぁ。」


涼は本来 弾けた若者だというのが、なんとなくわかる。


一行が言っていたように、美しさが、彼の性格や行動を抑制させ、他人が勝手に涼を造りあげている。


「彼女かと思ったよ。」

「やっぱり。

同期入社は二人だけなんで、話す機会が多いんです。」