一行の手に私の手を重ね、それを包み込むように神父様の手が優しく被い、それが今、ひとつの誓いになった。


見下したり、見上げたりせず、お互いを見つめ続ける 自分だけが中心でない日々が訪れるようにと、静かに聞こえてくる歓びの声と共に私達は誓う。




これからの長い道のりを歩む決心や、傷ついたり、傷つけたり、遠回りした私達がぐるっと一回りして、やっと見つけた場所を忘れないように、私達は誓う。




私と一行と、やがてこの腕に抱く、未だ見ぬ天使と共に、深く、深く、大切な人々に見守られながら、尊い未来への祈りを私達は誓う。





式の前日、ひとりアメリカへやって来る一行を迎えに、私はあの時の装いで空港まで来た。



昨日まで、仕事の合間に教会へ出向き、私達の出会い、その出会いがもたらした結婚、そしてその結婚がどんな意味を持っているのかを、神父様の狭い部屋で私はもう一度、この心に問いかけられた。



「本当ならお二人から、素直な気持ちをお聞きしたかったですね。」


だから、このまま岩沢の元へ一行を連れて行くつもりである。



かつて同じ会社に属していた年代の違う者同士が、遠くアメリカで出会う事など、誰が想像出来ただろう。




岩沢は言った。



「私は若い頃、偉ぶった大人にだけはなりたくないと思っていました。



年齢はその人のひとつの目安にはなりますが、自分にはないものを持つ若い人に頭を下げる事が出来る技量は、やはり生きてきた経験なんだと思うんですよ。



頭を下げると言うより、若くても、歳を重ねていても、本当に大切な事に立ち向かう姿勢が見える人には、自然にそうしてしまうオーラみたいなものを感じるものなんでしょう。


麗子さんが彼を選んだのも、そういう事だったのかもしれませんね。



仕事で成功することは大切な目標だけれど、幸せだと感じられない仕事は、時々少しの寂しさも運んで来る事がありますね。」




本当に大切な事。


それは、正直な生き方だと。