『無明の果て』

なんだろう。
一行には何を話しても、突き放したりされない安心感がある。


社会に出たばかりの頃、必死で負けまいとした私とは大違いだ。


「一行はさ、もてたでしょ?」


「全然っすよ。
フラレっぱなしです。
口説くなら今っすよ。」


「今夜は帰さないわよ」


なんて、二人で笑った。


チラチラ 涼を見ると、やはり彼女はキラキラの瞳で楽しそうである。


ヤキモチではないけれど、やっぱりちょっと気にはなる。


「一行、来週でいいよね。
正幸さんも来れるといいけど」


「ねぇ先輩、なんで俺の事呼び捨てなんすか?」


「えっ、ダメだったの? 
イヤだった?
ごめん。」


「違いますよ、逆です。
鈴木くんとか言わないで下さいね」


「なんだ一行、そうか一行、これで良い?
一行」


「うるさい」


「そろそろ出ようか」

と席を立った時、メールが鳴った。


”楽しそうで少し妬けます 涼“


元カノに似ているらしい私に、幻でも見ているの?