『無明の果て』

「あれから涼と連絡とったすか?」


「ううん」


嘘をついてしまった。

「俺も連絡してないんすよ。

あいつも忙しそうだし、また囲碁の大会があるらしいし。

見に行ってみませんか?」


夜中のメールでそのことは知っていた。


「ペア碁っていうジャンルがあるんですが、いつか大会に出てみませんか。」

とお誘いも受けていた。


ここに来て急に、若者達が、私の常識や観念を揺り動かす。



「プレッシャーに負けないぞ!」

と叫びたいのは私の方だ。



その夜、一行は少し緊張気味に私を待っていた。


カウンターだけのショットバーは、私のお気に入りの店である。



「いい店っすね。」


ポツリ ポツリ 席が埋まり、残り二つになった時、静かにドアが開き背の高い女性が


「座れるよ。」

と言いながら入って来た。


その後ろには、微笑んだ 涼が立っていた。