僕の決心はまだ迷いの中にあるのかもしれない。


悩んで、立ち止まって、くじけそうな時、そんな時にこそ見えない明日に進む事が意義ある術なんだと、彼女は身を以てそれを教えてくれた。



もしかしたら、僕の人生が待っていた、もうひとつの命が彼女なんだと、そう信じてみたかったと、弱気な僕の恋の、その命の手のぬくもりが今もこの手に蘇って来る。



眼をつぶる暗闇のずっと先で、もがいている自分の姿を見ながら、彼女が少し離れた場所から笑いかけている。


だけどその人が、そこから近付いて来ることがない事を、僕はもうとっくに知っている。


悲しいけど。


生きて行く事の重要な意味が、自分を必要とされている喜びみたいなものだとしたら、僕はその喜びを知らず、なんとなく生きているだけの、つまらない男になってはいなかっただろうか。


誰かのせいにして。


自分の進むべき方向が、彼女の前ではない事に気付き、何よりも彼女自身がそれを望んではいない事を認めたくない心が、僕を孤独にしてしまったのだと、投げやりになってはいなかっただろうか。



目に見える愛情を押し付けて、目に見えない心遣いなんて、考えてはいなかったんだ。


ただ、恋をしただけだと、ただそれだけだと。



路地の暗さに身体を隠して、ふたりが通り過ぎるのを息を止めて見送った。



アメリカと大阪にいるはずのふたりが、僕のすぐ横を歩いている。


僕はまだ、誇れる力も、微笑む気力も、ふたりの前で胸を張れる自信も持ち合わせてはいない。


どんな顔をして会えると言うんだ。



もうしばらく時の力を借りて、僕の姿が僕だけの色になって、誰にも似ていない夢をつかんだら、何処へだって会いに行くから、今はまだこの姿を見付けないでほしいんだ。



みんなで膝を寄せ合って、美味しいお酒でも飲める日が来るまで、僕は僕のやり方で生きて行くって決めたんだ。