暫くその場に座り込んで、海を見つめていたが、



やっぱり。



アルに会いたい。


こんな所で物思いに耽っている場合じゃないと、近くの木の実を適当に摘み…森へ戻ろうと踵を返す。


――が。



視界の隅、海から小さな木製の小舟がこちらに近づいてくるのが見えた。

一隻ではなく後方にもう一隻くっついているみたいで、少々不恰好に見える。


…なに、あれ。


慌てて木の陰に身を隠し、ジッと見ていると…やがてその小舟は眼下の砂浜に着き、
先頭の一隻に乗っていた人物―恐らく女―が、いそいそと大きな荷物を台車に乗せ始める。

―どうやら、後方の舟には誰も乗っていなかったようだ。

女は一人で二隻の舟を波の来ない場所まで引き上げると、ふう、と言った感じに腰をひねり、
台車に繋がれたロープを肩にかけると、引きずり歩いてきたのだ。


「……だ、誰よ…。」


もしかして、アルの敵かしら。

そうなのかしら。


だとしたら、アルが危ないわ。



早く帰らなきゃ。



広げた服の裾に木の実を包み込んで、私は早足で来た道を駆け戻る。