恐らくアストリッドがこちらに向かっている際に国王一行は出発しただろう。

今更止めにかかった所で既に手遅れなのは一目瞭然だ。


それに…今父は俺の事を敵対視している。

寧ろ城に配属されている奴らは皆そうか。



「先手を打たれたなアストリッド。この国の宰相を己の力量で潰したランベールだ。してくれる。」



だが――。



「まあ、いい。これも想定内だ。」



ニヤリと口を歪めた時、背後に気配を感じ振り返る。


白き衣―黒薔薇の君、国王第一専属騎士、ランベール・フォルジュ。

その黒髪と漆黒の瞳が、捉える先は…俺か。



「――王宮にいよいよお出ましか、ランベール。」



眉を吊り上げ、はははと笑うこの男の余裕は一体どこから来るものか。

ランベールは憎いほど端然としたまま胸に手を当て一礼すると、


「これはこれは、皆様方勢揃いで。」


表向きには爽やかな、しかし老獪さを孕んだ笑みを振りまいた。


「昨日はアストリッドをわざわざ残して行かれたようで。お陰でとんだ運動をさせられましたよ。全く、今日は筋肉痛だ。城で剣術の練習をするなら“一人で”して頂きたいものです。」


「…それは世話になったなランベール。だが、正直その程度で筋肉痛とはどうかと思うが。」


「その程度、でしたら、ね。」



笑う側でアストリッドを一瞥すれば、彼女はヒクリと肩を震わせる。


――どうやら城でヘマをしたらしい。