「朱音ー、入るよー?」


“その子”は、“岡野 朱音(オカノ アカネ)”と言った。


「空人?いいよー」


病室からは、かわいらしい声が聞こえてきた。


空人が引き戸を開け、中に入る。


清潔そうな部屋と、窓から見える風景を見たとたん、

氷暮は不快感に襲われた。


それは、あくまでも朱音がいたからではない。


(そうだ…わたしは、病室が苦手だったじゃないか…)


だって…毎日のように、通っていたもの…─