「まあ、先輩ならいいかな?」


空人は体を氷暮に向けると、また微笑んだ。

それは、いつもの無邪気なものではなかった─


「その子ね、家にいる時間と病院にいる時間が五分五分くらいで育ってきたんスよ。
だから、あんまり外いけなくて…その代わりに、本を読んでるんスけど。
おれもそいつが喜ぶような本を選べたらなあって思っていて…」


空人が“その子”と呼んだ時点で、その子が女の子だということはわかった。


氷暮はなぜか、胸がズキンと痛くなるのを感じた。