「…そろそろ戻ってもいいかな?本借りたかったんだけど。」


しばしの沈黙に、氷暮の冷静な声が響いた。


「あ…はい。すみません。」


「ううん。じゃあね。」



氷暮が屋上のドアを閉めるのを見届けてから、朱音はため息をついた。



「なんでよ…」



…そのとき。



また、ドアが開く音がした。


朱音は顔を上げる。