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やってきたのは、屋上だった。


心地よい風が髪を撫でる。



「…氷暮さん。」


朱音はニコッと微笑んだ。


「空人とわたしは、切っても切れない関係なんです。できれば、空人に近づかないでほしいです。」


朱音はキッと、にらむように氷暮を見た。


「……わたしは、空人に抱くこのもやもやの正体の名を知らない。だから、何もできない。」


氷暮は平然と言った。



「…っ」


朱音は顔をしかめた。


(なんで氷暮さんが相手なんだろう…無自覚だったら、勝ち目がないじゃない…!)


バレないように、歯を食いしばった。