「ねえ、それって…」


朱音の小さな声がした。


氷暮の視界の隅で、空人が微笑んでいた。


「そう。俺がよく持って行ってたやつだよ。」


「ああ、やっぱり?楽しみだな。」


朱音も微笑んでいた。


2人をふわふわとした空気が包む。


氷暮はまた、胸が痛むのを感じた。


バレないように、手を胸に当て、ギュッと握る。


(何だろう…これは…)