【短編】始まりのない恋。




「て、あぁ。俺そろそろ行かないと。
それじゃお前ら気をつけて帰れよー。
じゃ、な」





そう言うと、ポケットに突っ込んでいた片手を上げて去っていった。
唯の方をチラッと見ると少し顔を赤らめてポーッとしていた。
恋、してるんだなぁ…と改めて思った。





『…唯、そろそろ私たちも帰ろうか。
雨ヒドくなる前に、さ』


「あ、うんっ。そうだね~」





唯は慌ててにこっとして答えた。
それで私は笑ってしまった。今さら慌てなくていいのにって。