ゆっくり、わたしは音楽教室に入った。 「…寒かったでしょう?」 「…うん。少しだけ。」 口元を緩めて微笑んだ優ちゃんは今までと変わらない。 「…ピアノ、弾かないの?」 「…どうして?」 「…レッスン中、ピアノ、弾かなかったし、それに、優ちゃんの家、ピアノがなかった。」 優ちゃんは表情を崩さなかった。