すると、草がいっそう大きく揺れ、中から人が出てきた
怖くて思わず目を閉じた
この敷地内にいるということは、厳密には人ではないのだろう
「・・・人間」
その人が口を開いた
低くて落ち着いた声色だった
それまで、硬く閉じた目を開けた
その目に映ったのは、熱く光る赤い目だった
獰猛な獣のような目
それとは正反対の銀に輝く長い髪
気高い白馬を連想させた
その顔は、桐ヶ谷先輩に負けないほど整っている
しかし、先輩とはちがった、さわやかな、冷たい魅力を感じた
「おい、おまえさ」
「はいっ」
見とれていたところを突然話しかけられた
「血、出てる」
そう言って、ポケットからティッシュを出して、ぬぐってくれた
「あ、ありがとう」
冷たい雰囲気の人だったのに、やさしくて、びっくりした



