普通に歩けば数十秒で行けるこの距離を、かなり時間をかけて歩いた。
多分、感覚的に2分くらいやろな。
「何買うん?」
自販機の前に来たとき、男の子に聞いてみたけど、男の子はそのまま自販機の前を通り過ぎた。
飲み物買うんとちゃうかったんかな?
すると、その男の子は自販機の隣にあった緑のもの、公衆電話の目の前で止まった。
どうやらこの子の用事は公衆電話にあるらしい。
「誰かに電話かけるん?」
「うん。お父さんとお母さん。」
「あ、そうか。」
ポケットからテレフォンカードを出して、公衆電話に差し込む。
お父さんとお母さんて、病院に来てくれへんのかな。
番を押して、受話器を耳に当てているその後ろ姿は、小さくてか弱そうな男の子にしか見えへんかった。


