メッチャゆっくりやけど、そっと歩みを進めた。
痛いのに無理して歩く人って、うちくらいやろな。
病室から出ると、そこは色んな患者さんから、看護師さん、先生がうじゃうじゃ。
「すごっ。」
めったに病院なんか来ることのないうちにとって、そこは異世界やった。
「すみません・・・」
不意にかけられたその声に反応して振り向くと、誰もいてへん。
うちとちゃうかったか、と思ってたら再度「すみません」と言う声が聞こえた。
視線を少しだけ下に落とすと、そこには車椅子に乗った小さな男の子がいてた。
「うわっ、ごめん。」
「お姉ちゃん、初めてみるね。今日から?」
「え、あ、うん。すぐに退院する予定やけど。」
「僕もだよ。でも、ずっと前に言われたんだけどね?」
「そうか。なら、ホンマにもうすぐかもしれへんね。」


