私は今、大学で講義を受けている。

 大学は好きなことだけやれるってわけじゃなくて、一年生のうちは数学とか嫌いな教科も受けなくちゃいけないんだ。

 数学の授業は退屈で、私はノートをまとめるフリをして先生の似顔絵を描いていた。

 数学の先生、つか教授は頭の薄い人で、河童みたいに頭のてっぺんだけ禿げている。おっと、河童の場合はお皿が乗ってるだけだっけ?

 そんなことはそうでもいいか。

 私は先生と似顔絵を見比べた。

 なかなか上出来。

 隣で大あくびをかみ殺している純也に私はノートを見せた。

「巧いじゃん」

 潤んだ目を右手でこすりながら純也が褒めてくれる。純也のうるんだ眼は、なかなか色気があって、ドキッとする。

 褒められた瞬間、胸の奥がキュン、ってなる。嬉しかった。

 私が似顔絵を描くのはきっと、暇つぶしってだけじゃなくて、純也に褒めてほしいからだと思う。

 純也は、大学に入った日にいきなり声をかけてくれた人で、イケメン。今では女子よりも仲がいいんだ。